手指麻痺を支援する新しいリハビリ機器Naremが特許を取得!

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2024/12/20

手指麻痺を支援する新しいリハビリ機器Naremが特許を取得!

先端リハビリテーションセンターSACRA(サクラ)は、全国でも珍しい病院内にある研究機関で、各種教育機関や民間企業、研究者らと協働して、リハビリテーションアプローチの新しい価値を創出すべく、共同事業・共同研究を進めています。
そんなSACRAが、脳卒中や脊髄損傷などによる手指の麻痺を改善することを目的として、北九州市立大学と共同開発した「手指リハビリテーション支援システムNarem(ナレム)」が、このほど共同特許を取得しました。


要介護に直結する脳卒中・手指の麻痺

脳血管疾患(脳卒中)は三大疾病のひとつで、生活習慣病などが要因といわれ、2020年には患者数が約174万人(※1)になりました。がんや心疾患に比べて死亡者数が少なく生存率が高いのが特徴で、そのなかでも脳卒中は、麻痺が残りやすいといわれ、認知症に次いで要介護要因の第2位(※2)になるなど、入院や介護などの問題に直結しています。
特に、手指は脚や腕に比べて繊細な動きを要するため、そこに麻痺が残ると皿洗いや洗濯など、日常生活を送るために最低限必要な動作=ADLが低下し、日々の生活にも支障が出てしまいます。
(※1)厚生労働省「患者調査」2020年
(※2)厚生労働省「国民生活基礎調査」2022年

 

従来のリハビリとは違うアプローチ

そんな脳卒中や脊髄損傷などによる手指麻痺を改善する目的で開発されたリハビリテーション支援ロボットNaremは、従来の手指リハビリ療法とはまったく別のアプローチで開発されました。仕組みはこうです。

1. 動く方の手指の動作を「LEAP MOTION」で取得
2. システムにて関節ごとの細微な動作を解析して、左右対称に動きをコピー
3. 空圧制御グローブが瞬時に動きを再現

■ 細かな動きも瞬時に再現
これにより、動く方の手指と同じ動作を、ほぼ同時に麻痺した手指に行わせることができます。細かな動きを要する手指麻痺は、これまで効果的な治療法が確立されていませんでしたが、Naremでは手指特有の関節ごとの細微な動きの再現が可能なため、従来の治療法を上回る効果が得られると期待されています。
また、麻痺した方の手指の動きをモニターで視認することで、運動の意図と結果を視覚的に照合することが可能となり、主体的に動かしていると脳が錯覚、それらの連続的な刺激が脳を活発化させ、より回復へと近づけることができます。

■ 短時間、1人でも使用可能
またNaremの利点はそれだけではありません。従来の手指リハビリ療法では、1回のリハビリで6時間を要したり、セラピストの介助が必要なのですが、Naremは短時間で1人でも行うことが可能なため、時間や介助者の制限に捉われることなくリハビリを行うことができます。検証の結果、1回30分、週2回程度の使用でも効果が認められました。

■ 発症からの時間は問わず
特に興味深いのは、発症からの時間に関わらず有効だという点です。通常、リハビリはそれを行うタイミングがとても重要とされていますが、Naremでは回復期のみならず発症から時間が経過した維持期脳卒中患者さまにおいても一定のリハビリ効果が得られることが証明されました。
つまり、発症からの時間の長短に関わらず、Naremを使ってリハビリを行えば機能回復の可能性があるということです。もちろん従来療法との併用も可能ですので、これまでのリハビリであまり効果が得られなかったという方にもNarem療法は希望の光となる可能性があります。

【従来のリハビリ療法】
・CI療法/動く方の手指にミトンなどをつけて拘束し、麻痺した手指を集中的に使わせるリハビリ療法。(ある程度動かせる人のみが対象で、1日6時間程度のリハビリが必要)
・ミラー療法/動く方の手指を鏡に反映し、鏡の裏で麻痺した方の手指をセラピストが真似て動かすリハビリ療法。(自分が動かしている主体感がなく、常にセラピストの補助が必要)
 


 


検証結果(実際の症例)

・脳卒中で約8年ほど思うように手指が動かせなかったが、1回30分、週2回程度のNaremリハビリ療法を3ヶ月続けた結果、手指が動かせるようになりました。(76歳/女性)

・日常の家事が難しく介護をお願いしていたが、Naremリハビリ療法を行った結果、お茶碗を洗ったり、洗濯物をたたむ等の日常的な家事ができるようになり、家族の介護の負担が減ったと喜んでもらえました。(53歳/女性)

・発症から約1年、入院や外来・デイケアでのリハビリでは全く動かなかった手指が、Naremリハビリ療法を約4か月続けた結果、生活場面で補助的に麻痺した手指を使えるようになり、その後新しい仕事に就労することができた。(56歳/男性)

・手指麻痺の回復を諦めきれずに様々な情報を探していたところ、Naremをみつけリハビリを受けることになりました。約3か月のNaremリハビリ療法により、麻痺した手指を使って食事したり、料理ができるようになりました。(70歳/女性)
 


プロジェクトについて

■ 開発ストーリー

スタートは、北九州市立大学の松田鶴夫教授がNaremの基幹システムを開発した2016年まで遡ります。当初は大脳皮質運動野や末梢筋・神経に対する研究を行なってきた松田教授が、とある論文をきっかけに、外部刺激による手法ではなく、患者自身の運動と連携する意識のフィードバックシステム(現在のNaremにつながるシステム)を発案し、プロトタイプを組み上げたところから始まります。

その後、桜十字グループや機器開発関連企業がチームに加わり、2020年よりSACRAが患者さまにNaremを使ったリハビリの提供を開始。運用試験を行いながら効果検証を繰り返し、改良を重ねてきました。機器の技術的なブラッシュアップやソフトウェア開発は、大学や医療機関だけでは難しく、まさに産学医が連携した結果だといえます。
2021年頃より独創的・先駆的な研究として国から認められ、科学研究費助成事業として研究費が助成されるまでになりました。その後特許を出願し、2024年の夏にようやく「リハビリテーション支援システム、プログラム及び制御装置」として特許を取得(特許第7531813号)しました。
 
 

■ 北九州市立大学教授/松田 鶴夫
Naremは脳波・筋電位・AI・電気磁器刺激を使わない初めての機材になります。これまでの療法とはまったく違うアプローチでの開発でしたが、当初は手指を動かすだけの機材と同列とされ、先行する同業他社との違いを理解してもらうために2年近くの時間を費やす等、苦しい時代を長く過ごしました。
それでも諦めずに、臨床運用の質向上のために機器やソフトウェアのブラッシュアップを行い、SACRAからの臨床結果を集め裏付けを厚くすることができたことが、今回の特許取得に繋がりました。まさに産学医が連携した結果だといえます。
 
■ SACRA主席研究員/遠藤 正英
現在Naremは、桜十字福岡病院と久留米市にある花畑病院のリハビリで使うことができますが、今後はその場所をもっと増やしていきたいと考えています。そのためには製品化が必要ですが、今回の特許取得が製品化への推進力になると期待しています。また今は手指に特化した形となっていますが、これを大腿部や膝関節へ転用する構想もあり、現在既に着手しています。まずはSACRAを核として日本全国の臨床現場へNaremを普及させ、拡大させていきたいと考えています。SACRAでは、引き続きNaremの効果検証を行い、手指麻痺に対する新たなリハビリテーション法の確立を目指していきます。
 
 
桜十字先端リハビリテーションセンターSACRA
既成概念に捉われない自由な発想と、職域の垣根を超えた様々な人との交流によって、新たな創造の芽を生み出すリハビリ機器研究機関SACRA。大学や企業、医療機関などに属するセラピスト等で構成され、検証と実践を繰り返しながら新しいリハビリテーション機器を創り出しています。他にも外部向け研修会や施設や企業向けに研究機器の貸出等も行っています。
 


 
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(Posted by 広報)

     

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